Balkan Folk Music Discography

バルカン半島~黒海周辺地域の音楽と踊りを深掘りするブログ

マリア・イ・マグダレナ・フィラトヴィ(Maria i Magdalena Filatovi)

今回はブルガリアのフォーク・デュオ、マリア・イ・マグダレナ・フィラトヴィ(Mariya i Magdalena Filatovi、Sestri Filatovi)にスポットを当てます。多数のレパートリーの中から厳選して3曲紹介したいと思います。

 

最初に紹介する曲は、ブルガリア民謡のイズグリャラ・エ・メセチンカ(Izgryala e mesechinkaです。

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2015年の映像です。イズグリャラ・エ・メセチンカは「お月さまが昇った」の意味。普通はブルガリアン・ボイスの合唱で緩やかに歌われることが多いと思いますが、上の動画では軽快なアレンジになっています。

バック・ダンスはトラキア地方の踊り(ラチェニッツァ)でしょうか。このあたりのフォーク系動画ではこうした踊りを見るのも楽しいものです。

 

マリア・イ・マグダレナ・フィラトヴィは、ブルガリア・ピリン地方の民謡・フォーク歌手(デュオ)です。また、見た目でもわかるように双子の姉妹です。以後、フィラトヴィ姉妹と略します。

フィラトヴィ姉妹はブルガリア南西部の町、ブラゴエヴグラトで生まれ育ちました(下の地図参照)。この町を州都とするブラゴエヴグラト州は、北マケドニアおよびギリシャと国境を接する、歴史的にピリン・マケドニアまたはピリン地方とも呼ばれる地域です。

二人の名前は母方の祖母と曾祖母にちなんで名づけらました。(新約聖書に出てくる聖マリア・マグダレナとちょうど一致するので)聖書的でとても気に入っているとのことです。

 

歌を始めたのは8歳の頃から。祖母からたくさんの歌とブルガリアのフォークロアを教わりました。

1999年にはファースト・ソロ・アルバム(CD)「ザリュウビフ・マモ…(Zalyubih, mamo...)」をリリース。ピリンの民間伝承の歌とマケドニアの歌から計12曲収録されました。

なんと、このときまだ12歳です。

アルバムはすぐにフォーク音楽ファンの間で人気になりました。またその人気に乗じて2002年にはこのアルバムのミュージック・ビデオ(DVD)もリリースされています。

 

その後2002年から2006年の間は、各地のフォーク・フェスティバルに毎回参加していました。ジェネラル・スポンサー賞や若手作家賞などいくつか賞も受賞しています。

2002年には「ドゥヴァ・セ・ロダ・スロディヤヴァト(Dva se roda srodyavat)という曲をピリン・フォーク・フェスティバル 2002 のコンペティション・パートで披露しました。この当時の音源は「カリンキノ(Kalinkino)」という名前で日本でもダンス用音源に用いられていますので、ご存知の方もいるかと思います。

 

ということで、二つ目に紹介する曲はこのドゥヴァ・セ・ロダ・スロディヤヴァト、「二人はお互いに家族になるだろう」です。

ただし、下のミュージック・ビデオは、2002年頃のものではなく、その後に専属契約した所属レコード会社*1で2015年にあらためて制作されたものですので、お間違いなく。(確かに、10代には見えないですね。)

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三つ目の曲はピリン地方の伝統民謡「ルスィ・コスィ・イマム(Rusi kosi imam)」です。前述のファースト・アルバムおよびそのDVDに「エレノ・ヴィノ・ツァルヴェノ(Eleno, vino carveno)」という題名で収録されています。DVDの版元*2から動画が公開されていましたので、最後にこれをご紹介します。

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2002年のDVD動画なのでおそらく14、5歳くらいと思われます(明らかにさっきより若い!)。フィラトヴィ姉妹の10代の頃の人気ぶりを示す貴重映像と言えそうです。

 

現在は30代半ばくらい。地元の大学*3で博士号を取得したという話もあるとか。本当に地元の宝ですね。

現在もブラゴエヴグラトを拠点に歌手として活動しています。今後の活躍にも要注目です。■

 

参考

  • Мария и Магдалена Филатови - ИЗПЪЛНИТЕЛИ, PAYNER. [link]
    レコード会社パイネル(Payner)公式のマリア・イ・マグダレナ・フィラトヴィの紹介ページ。
  • МАРИЯ И МАГДАЛЕНА ФИЛАТОВИ СПЕЧЕЛИХА СЪРЦАТА НА БАНСКАЛИИ, bansko.bg(バンスコ基礎自治体公式ウェブサイト), 23 May, 2013. [link]
    2013年5月にブラゴエヴグラト州バンスコ基礎自治体の解放100周年記念プログラムで行われたフィラトヴィ姉妹のコンサートについての報告記事。ここにフィラトヴィ姉妹の2012年頃までの経歴が詳しく記されている。
  • Милчо Игнатов; "Мария и Магдалена Филатови: Хем си приличаме, хем сме различни," Информационна агенция "БЛИЦ", 2 Dec., 2021. [link]
    BLITZ情報局の2021年12月2日の記事。ただし掲載時期および内容に不明瞭な点(おそらく2009年前後に存在していたであろう対談記事の流用、および主題に合わせるための
    改竄)が見られるので、読解については注意が必要。
    BLITZは「ブルガリアにおける最大の出版社の中でも主導的な地位を占めている」と自称しており、倫理規定も厳しく設けているだけに、とても残念。
 

*1:パイネル(Payner Ltd.)。ブルガリア最大手のレコード会社。今回紹介した3つの動画のうち最初の二つは、パイネル社傘下の音楽専門テレビ局 プラネタTV(Planeta TV)から提供されている公式動画。

*2:ロディナTV(Rodina TV)。ブラゴエヴグラトにある24時間放送の音楽専門テレビ局。

*3:おそらくネオフィト・リルスキ南西大学