Balkan Folk Music Discography

バルカン半島~黒海周辺地域の音楽と踊りを深掘りするブログ

Mona Mona (No.2)

前回は、アラム・モヴシシャン(Aram Movsisyan)が歌うモナ・モナ(Mona Mona(またはマドモネド・モナ(Madmoned Mona)というアルメニアの曲を紹介しました。演奏はノライル・カルタシャン(Norayr Kartashyan)率いるヴァン・プロジェクト(VAN Project)です。

カルタシャンによってアンサンブル用にアレンジされたこの曲は、オリジナルは中世以前のアルメニア人をルーツに持つヘムシン人(ハムシェン人、ハムシェン・アルメニア人)によって歌い継がれてきた民謡でした。しかし、歌詞の内容はアルメニア人にもよくわからいようだということも話題にしました。

今回は(無謀にも!?)アルメニア人にもよくわからいヘムシン方言の歌の日本語訳に挑戦します。

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Mona Mona (No.1)

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画像出典:YouTube / Aram Movsisyan ft. Norayr Kartashyan and Van project Mona Mona

 

いい写真^^
今回はアルメニアン・フォークでいきます。

 

アルメニアの音楽というとピンとこない人もいるかもしれませんが、旧ソ連時代の代表的な音楽家アラム・ハチャトゥリャンや、アルメニア近代音楽の父コミタス・ヴァルダペットの音楽ならば、どこかで一度は聴いたことがあるかもしれません。でも今回は、民族音楽学者でもあったコミタスでさえも知らなかったであろう、アルメニアフォークロアのちょっと深いところを攻めます。

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Bilhenov Čoček / Feruzovo, etc.

前回は北マケドニアのロマ(ジプシー)音楽の“Queen”、Esma Redžepova(エスマ レジェポヴァ)をフィーチャーしましたので、今回は“King”でいきます。といってもフラメンコのGipsy Kingsではありません。今回はサックス/クラリネット奏者の“King” Ferus Mustafov(フェルス ムスタフォフ)の曲を取り上げます。

 

まずはFerus MustafovのBilhenov Čoček(ビルヘノフ チョチェク)から

www.youtube.com

クラリネットのスピード感ある旋律と間奏の即興がとてもFerusっぽい(?)かっこいい1曲です。拍子は前回のNa Struga Duḱan Da Imamと同じ9/8拍子でテンポもそれほど違わないのですが、小刻みなパーカッションと超絶クラリネットが躍動的なノリを生み出しています。

同じ9/8拍子といってもリズムの取り方が前回のとは異なります。前回は「タンターンタンタン」でしたが、今回は「タンタンタンターン」になります。少し深入りすると、「タン(2)」のかたまりと「ターン(3)」のかたまり(数字は8分音符の数)で分けて、前者は「2-3-2-2」、後者は「2-2-2-3」のように表されます。この後者のリズムは主にブルガリアマケドニアにおけるチョチェク(čoček)の一般的な形式の1つと言われています*1

*1:他「2-2-3-2」も一般的で、特に「gypsy 9」と呼ばれます。また旧ユーゴスラビア全体で見れば4/4拍子や7/8拍子のčočekもあります。(Wikipedia英語版「Čoček」より)

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